今回はある意味特別企画。
- CL1355 6eye PROMO
- CL1355 2eye
- PC8163
3種の聴き比べ。
結果は・・・
Miles Davis – Kind Of Blue 3種プレス仕様比較(1959年モノラル・プロモ盤 / 1963年モノラル再発〈2‑Eye〉 / 1977年ステレオ再発)
【はじめに】
モダンジャズ史上屈指の金字塔『Kind Of Blue』。
ここではあなたが指定した3種のUSコロンビア盤――
1959年モノラル初回プロモ盤(CL 1355・白6‑Eyeラベル・Adderly誤記・B面曲順誤記・Bridgeport「4」印刷)、
1963年モノラル再発盤(CL 1355・2‑Eye Guaranteed High Fidelityラベル・B面曲順正順)、
1977年ステレオ再発盤(PC 8163・ブルー/ブラックラベル・Stereo)
の仕様差を事実ベースで整理します。
① 1959年 モノラル初回プロモ盤
Columbia CL 1355, 白6‑Eyeプロモーションラベル, “Adderly”誤表記, 「4」印刷 (Bridgeportプレス)
- リリース:1959年8月
- 録音日:1959年2月3日、4月22日
- レーベル:Columbia(白6‑Eyeプロモラベル)
- フォーマット:LP, Album, Mono, Promo, Misprint
- プレス工場:Columbia Records Pressing Plant, Bridgeport(裏ジャケに「4」印刷)
- ジャケット印刷:Imperial Packing Co., Inc.
- 特徴:
- ジャケット・ラベルともに「Julian Adderly」と表記(Adderleyの誤植)
- B面曲順がジャケット・ラベルともに誤記(正順はAll Blues → Flamenco Sketches)
- モノラル専用カッティング
- トラックリスト:
- So What
- Freddie Freeloader
- Blue In Green
- Flamenco Sketches
- All Blues
- マトリクス例:XLP47324‑1G / XLP47325‑1D 他バリエーションあり
- パーソネル:Miles Davis (tp)、John Coltrane (ts)、Cannonball Adderley (as)、Bill Evans (p, except A2)、Wynton Kelly (p on A2)、Paul Chambers (b)、Jimmy Cobb (ds)
- 権利協会:BMI
② 1963年 モノラル再発盤
Columbia CL 1355, 2‑Eye Guaranteed High Fidelityラベル
- リリース:1963年
- レーベル:Columbia(赤2‑Eye、Guaranteed High Fidelity表記)
- フォーマット:LP, Album, Mono, Reissue, Repress
- 特徴:
- 初期スタンパー(XLP47324‑1XX)から後期スタンパー(XLP‑47324‑1XX)への移行期の盤
- ラベルの「Guaranteed High Fidelity」フォントや配置が変化、下部Columbia表記までの余白が広い
- B面曲順は正しい順序(B1 All Blues → B2 Flamenco Sketches)
- トラックリスト:
- So What
- Freddie Freeloader
- Blue In Green
- All Blues
- Flamenco Sketches
- マトリクス例:XLP‑47324‑1BJ / XLP‑47325‑1BG
- パーソネル:①と同じ
- 権利協会:BMI
③ 1977年 ステレオ再発盤
Columbia PC 8163, Blue/Blackラベル, Stereo
- リリース:1977年(オリジナルステレオは1959年CS 8163)
- レーベル:Columbia(ブルー/ブラックラベル、Stereo表記)
- フォーマット:LP, Album, Stereo, Reissue, Repress
- ジャケット:STEREO表記追加、型番はPC 8163
- 特徴:
- 裏ジャケのB面曲順表記が誤っている(正しい順はB1 All Blues → B2 Flamenco Sketches)
- 複数のランアウト刻印バリエーション存在
- トラックリスト:
- So What
- Freddie Freeloader
- Blue In Green
- All Blues
- Flamenco Sketches
- マトリクス例:XSM 47326‑1CL / XSM 47327‑1ED ほか
- パーソネル:①と同じ
- 権利協会:BMI
【仕様差まとめ】
- 1959年CL 1355モノラル・プロモ:白6‑Eyeプロモ、Adderly誤表記、B面曲順誤記、「4」Bridgeport印刷、モノ専用カッティング
- 1963年CL 1355 2‑Eyeモノ再発:黒赤2‑Eye Guaranteed High Fidelity、曲順正順、スタンパー移行期仕様
- 1977年PC 8163ステレオ再発:ブルー/ブラックStereoラベル、裏ジャケ曲順表記ミスあり、複数マトリクスバリエーション
私の持っている盤、上記の通り、Miles Davis Kind Of Blue CL1355 PROMO・CL1355 2EYE・PC8163 聴き比べてみました
聴き比べの前に簡単に?購入の経緯から
購入の経緯
最初に手に入れたのは、CL1355PROMO。
もう4年くらい前になるのでしょうか・・・
以前からほしいと思っていた、CL1355、KIND OF BLUEのオリジナル盤。
なかなか手に入りませんでした。
もっとも、7年くらい前に、今はなきとあるレコード店で、CS8163、ステレオのオリジナル盤を購入して所有していました。
その当時は、それほど価値が高くなかったので、状態はほぼ完璧で1万円ちょっとくらいで購入したのを覚えています。
しかし何を血迷ったのか、結局そのCS8163のステレオオリジナルは売却してしまいました。
振り返ると、
「なんで売ってしまったのか?」
と後になって考えたのですが、ちょっと理由は明確になってきました。それは後述。
で、その後。
結局CS8163のステレオオリジナルは売ってしまったものの、
「やっぱりジャズ好きとしてはkind of blueは持っていないと駄目だよな・・・」
と考えて、今度はモノラルオリジナル盤を求めていました。
しかしなかなか機会に恵まれなかったものの、とある日にHMVレコード新宿店の在庫を見ていたら、ありました。
Kind Of Blueのモノラルオリジナル、しかもプロモが。
しかし状態はVG++だったので、気にはなったものの、
しかしその当時としては、やすかった、いや今にして思っても安かった、
5万円くらい。(今ではプロモの状態良好品だったら10万円はいくでしょう)
でも、VG++の状態が気になって、実際に新宿に視聴しにいって、聞いてみたら、
「お?悪くないじゃん。」
と思って、たぶん、一時間くらい迷った末、購入したことを記憶しています。
しばらく、何回も聞いたことを記憶しているのですが、そこからしばらくしたら聴かなくなってしまいました。
・・・なんでだろう?
1年くらい前だったかな?久しぶりに聞いてみて納得。
「・・・駄目だ、ノイズ気になる。」
そう・・・
今になって思うと、結構ノイズが気になります。
私の場合、人の判断で申し訳ないんですけどcotton clubさんのこの意見が参考になりました。
故・岩波洋三さんは『とりあえず買っておいて、あとで買い替えればいい』とおっしゃっていたけど、個人的には雑音が気になるレコードは聴く気になれない。たとえば周回音が3回以上続くような盤はもうダメ。https://ameblo.jp/cottonclubyears/entry-12680143853.html
この文章を読むまでは、私の中で明確な「レコードを買う状態の基準」はなかったのですが、これを見てからは明確に「3回以上周回ノイズがする状態の盤は買わないように」していました。
その観点を持ってから、つまりいわゆる「判断基準」を持ってから、kind of blueのオリジナルプロモを聴き直してみたら、駄目でした。
特に私の大好きな「ジョン・コルトレーン」のサックスのところで何回もパチパチとノイズが出てしまいます。
聞いているうちに、
「あ、こりゃ駄目だ」
と思い、買い直す決意をしました。
かといって、いまさら、このkind of blueのオリジナル盤を買い直そうと思ってもさぁ大変、
思い切り値上がりしています。
以前は2~3万円で状態の良い盤が買えたのですが、今この盤の状態良好品を買おうとしたら5万円以上するのが当たり前。
というわけで、いまさら、モノラルオリジナルを買い直すのはどうかと思い、せめて、「ステレオ盤」の安いやつを買い直すことにしました。
CS8163の赤late盤
か、最悪PC8163
でもいいかと思い探してみることに。
しかしそういうの探してみると意外と見つからないものなんですよね。
で、なんとか入手できたのがPC8163。
「ようやく手に入ったわ・・・」
と安堵して聞いてみる。
うーん、以前、ステレオオリジナルを持っていたのに手放した理由がわかったわ。
「なんか、個人的にステレオよりもモノラルのほうが好き」
でした。
よく、kind of blueのステレオオリジナルの音は素晴らしいと言われます。
一説にはこんな声も。
マイルスのオープン・トランペットがナチュラルな音色(オリジ以外ではチャルメラみたいに聞こえる)で深々と響いてくる。このアルバムはステレオで聴いて欲しい。
レコードのススメ|中古レコード Ninonyno2(ニイノニーノニ)Ninonyno2(ニイノニーノニ)はオリジナル盤レコードを中心にジャズ、ヴォーカル、ロック、クラシックレコードの販売、買い取りを行っています。オーディオルームを完備しておりオーディオ機器・レコードの試聴可能
ホンマかいな・・・
と思いたくなりますが、実際にPC8163を聞いてみましたが、全然そんな事ありません。
まぁ、私みたいな安物の装置で聴いているから、そう感じるのかもしれませんが・・・
マイルスのトランペットがチャルメラみたいに聞こえる・・・ということは全然ありません。少なくとも個人的には。
大変失礼な言い方なんですけど、こういう「レコード店の言っていることをそのまま鵜呑みにするのは危険」だと感じます。
PC8163でも全然良い音はします。
っていうか十分なんじゃないんでしょうか?
厳密には、
今回の「1B」盤と「2A」盤 (そして参考写真の「1A」) は、文字列の揃い具合の一致から、末尾のみを変更して刻印されたもので、同時期に(あるいは同じ日に)、同一の技師が同一の調整でカッティングしたものの可能性が高いと言えるのではないでしょうか。つまり3rdプレスの「2A」盤も、音質の上で非常にオリジナル性が高いということです。
で、聴き比べた結果はどうなの?
という話。
結論から先にいうと、
「よっぽどのプロとかでない限り、普通に聞く分には2eyeで問題ないので、状態が良いならそっちのほうが断然お買い得。」
そして、
「kind of blueステレオ神話に騙されないで」
ということです。
実際に違いがわかるように録音してみました。
その結果がこちら。
まぁ、録音したものなので、どこまで違いが伝わるかわからないんですけど、
全然違いがわからないんですよね・・・
ちなみに刻印は3つで全く異なります。




A面は、「XLP47324-1AJ」と、プロモ盤同様、マト盤まではひとつづきになっていて、B面は「XLP-47324-1AJ」。
discogsによると、この2eyeは、ハイフンありへの「転換期」にあったそうなので、おそらくこのように、片面ずつ違う刻印になっているんだと思います。
PC8163はこちら。
XSM-47326-1CH
このように、マトリックス記号は、連チャンではなくてXSMと326のあとにハイフンがあります。
まぁ、後期のプレスなんでしょうね。
そのあたりはわかります。
で、実際に聴き比べた感想は?
うーん、違いはわかりません。
正直、2EYEでも十分良い音がします。
実際、こんな意見もあります。
セカンド以降のプレスでも恐らく同じくらい素晴しいと推測します。Columbiaですから品質か劣化するとは思えません。https://ameblo.jp/cottonclubyears/entry-12468656211.html
This is my go to copy I prefer the Mono issue and it is superior to any Stereo copy or six eye issue that I have or have heard.
(これは私が頼りにしているコピーです。私はモノラル版の方が好きですし、私が持っている、または聞いたことのあるどのステレオコピーやシックスアイ版よりも優れています。)
https://www.discogs.com/ja/release/21341011-Miles-Davis-Kind-Of-Blue
・・・さすがにここまではいいません。2EYE盤が6EYE盤よりも「音が優れている」とまでは感じませんでした。
だけど、個人的には・・・
「たぶん、目隠しされても音の違いを判別できない。」
と思います。
それくらい、別の6EYEと2EYEの顕著な差はわかりませんでした。
あまりこういうことを書くのは良くないかもしれないけれど、
そりゃあ、「売る側」は高い値をつけても売れるであろう「6EYE」をおそうとする。
そうして、6EYEやプロモの神話が確立されればされるほど、つまり、「6EYEオリジナルやプロモの方が音が良い!」という噂が立てば立つほど、値段が釣り上がりその分、売上も上がるから、そういう神話や噂に便乗する。
結果、そういう話にのせられて「2EYEなんて価値がないよね。」と見逃してしまう。
それで、6EYEのオリジナルやプロモを購入しようとして、あるいは実際に購入して家計が火の車。もしくは家族に責められるなんて憂き目にあったり・・・
でも、そんな必要はないと思います。
全然2EYEでも良い音します。
ただし、私がそれよりも今抱えている問題は、
6EYEのプロモの「状態が悪かったから2EYEなどの再発盤が欲しかった」という理由だったんですけど、
今、録音した、6EYEプロモの録音した音を聞いてみたら、
「あれ?全然状態、悪くないじゃん・・・」という話。
というか、プロモの問題点は、多くが「白ラベル」を使われているので、カビや汚れが非常に目立つ点なんですよね。
正直、そんなに意気込んで、(よっぽど安く、しかも状態が極めて良いなら話は別ですが)プロモを買い漁る必要はないんじゃないかと思います。
もうひとつ。
先ほど、「以前ステレオオリジナルを持っていたのに手放してしまった」ということを書きましたが、PC8163を聴き直してその理由に思い至りました。
「うーん、正直、そこまでステレオの音が良いとは思えないんだよな・・・」
という話。
あくまで記憶の中での聴き比べですが、CS8163のステレオオリジナルとPC8163の再発盤。
音の違いはやはりそれほど感じないのですが、でもそれ以前に。
どちらにしても、ステレオだから極めて、すごく音が良いかと言われるとあまりそう感じないんですよね。
むしろこの盤、「モノラルのほうが音圧があって好き」です。
実際こういう意見もあります。
それでは、オリジナル・モノ盤。ちなみに、ころらの方はレーベルのB面曲順が間
違っているので、59年10月以前のプレスと思われる。隊員一同:「・・・・・・」
(しばし、レコードの音に聴き入り)
「いい!この音いいよ。カインド・オブ・ブルーに合ってる」
「これまで、ステレオ版しか聴いたことなかったけど、モノ最高!」
「ステレオ版は無理矢理、左右にメンバーを並べたって印象が強いけど、モノは演
奏がみごとに溶け合っている感じ」
「エヴァンスがライナーで書いた、日本の水彩画(墨絵)のような演奏」と表現し
たそのニュアンスが伝わってくるね」
「モノでピッチが修正されたアナログ盤を作ってほしい!」という訳で、モノは「カインド・オブ・ブルー」をより「カインド・オブ・ブルー」
らしく聴くために、ふさわしいフォーマットという見解に・・・。 PCD KIND OF BLUE
そうなんですよね・・・
「「ステレオ版は無理矢理、左右にメンバーを並べたって印象が強い」っていうのは感じるところなんです。
「「エヴァンスがライナーで書いた、日本の水彩画(墨絵)のような演奏」と表現し
たそのニュアンスが伝わってくるね」」
これもまさに、ぴったりだと思います。
少なくとも「ステレオ神話」に踊らされて躍起になってステレオオリジナルを集める必要はないんじゃないかと思います。
決して私は、「モノラル信者」というわけではありません。
実際に、dave brubeckの名アルバム、time outは、モノラルオリジナルを聞いたことがないのでなんとも言えませんが、確かにステレオの洗練された音がとても聞いていて心地よい。
繰り返しになりますが、dave brubeckのtime outに関しては、モノラルオリジ(あるいはそれに近い盤)を聞いたことがないのでなんとも言えませんが、ステレオの方が良いと思います。
でも、kind of blueに関しては高いお金を払って状態の悪いオリジナルやステレオを買う必要はないんじゃないかと思います。
結論
そんなに音の違いはわからないです。
少なくともプロモと2EYEを聴き比べた限りでは、discogsで示されているような
モノラルプロモ
- 低:¥7,386
- 中間点:¥44,313
- 高:¥177,252
2EYES
- 低:¥1,477
- 中間点:¥3,250
- 高:¥14,770
のような、価格ほどの音質の違いはないんじゃないかと感じます。
まぁ、金銭的に余裕があれば、そりゃあ、コレクターとしてはオリジナルやプロモが欲しくなるのは当然なんですけど、「ジャズをオリジナルに近い音で楽しむ」のが目的であれば、2EYESで十分です。
ステレオも、PCやCSにしても、赤LATEで十分なんじゃないかと感じます。
怒られてしまうかもしれませんが・・・
少なくとも状態の悪いモノラルオリジナル盤を高いお金で買うよりかは状態の良いセカンド版を安く買ったほうが絶対に生涯大切にできると思います。
コメント