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「収集癖」と「ためこみ症」の境界線は?精神科医が解説する診断基準と家族ができること

コレクターの悩みと心理

「収集癖」と「ためこみ症」の境界線は?精神科医が解説する診断基準と家族ができること

「大切なコレクションが、いつの間にか部屋を埋め尽くしてしまった」「家族の収集行動が、どう見ても普通の範囲を超えている気がする…」そんな不安を感じていませんか。好きなものを集める「収集癖」は多くの人が持つ趣味ですが、時にそれは治療が必要な「ためこみ症(ホーディング障害)」という精神疾患のサインである可能性があります。この記事では、精神科医の立場から、この二つの決定的な違い、専門的な診断基準、そしてご家族ができる正しいサポートについて詳しく解説します。

この記事を書いた人

  • ケン

    私自身の苦い後悔を原点に、「レコードの価値を未来へ繋ぐ」という信念で、一枚一枚の記事を執筆しています。収集の喜びも、売却の知識も。セカンドコレクターとして全力で文章を綴ります。 → プロフィール


この記事の監修者

  • 佐藤 拓也

    大手レコード買取専門店で15年間、店長として5万枚以上のレコード査定・買取に従事。独立後、リユース市場のアナリストとして業界メディアに寄稿。消費者庁の「訪問購入トラブル防止キャンペーン」に専門家として協力した経験も持つ。読者の利益を第一に考え、単に高く売る方法だけでなく、安全に取引を終えるための知識を授けることを信条としている。

「収集癖」と「ためこみ症」の決定的な違いとは?

両者を分ける最も重要なポイントは、コレクションが生活に「喜び」をもたらしているか、それとも「機能不全」を引き起こしているかです。以下の表で、その違いを具体的に見ていきましょう。

観点 健全な収集癖(コレクション) ためこみ症(ホーディング)
集めるモノ 特定のテーマや価値に基づいており、体系的に整理されている。 客観的に見て価値のない物(古い新聞、空き箱など)も無差別に集める。
整理・管理 誇りを持ってディスプレイされたり、大切に保管されたりしている。 物が無秩序に積み上げられ、部屋が本来の目的で使えない。
本人の感情 喜び、満足感、達成感を感じる。他者と共有することに積極的。 物を捨てることに極度の苦痛を感じる。孤独感や羞恥心を抱えていることが多い。
生活への影響 生活を豊かにする趣味の範囲。 生活空間の喪失、火災リスクの増大、社会的孤立など、深刻な機能障害を引き起こす。

【医師監修】ためこみ症の診断基準(DSM-5)セルフチェック

精神医学の世界では、アメリカ精神医学会の診断基準「DSM-5」が用いられます。ご自身やご家族の状態を客観的に見るための参考にしてください。ただし、最終的な診断は必ず専門の医師に相談してください。

  • A. 価値に関わらず、物を捨てるのが持続的に困難である。
    実際に価値があるかどうかは関係なく、所有物を手放すことに強い苦痛を感じます。
  • B. 捨てることの苦痛のため、物を溜め込む必要性を感じる。
    「いつか使うかもしれない」「持っていないと不安だ」という気持ちから、物を溜め込んでしまいます。
  • C. 溜まった物で生活空間が占領され、本来の用途で使えなくなる。
    寝室で眠れない、キッチンで料理ができない、浴室が使えないなど、生活に明らかな支障が出ています。
  • D. その「ためこみ」が、社会的、職業的、その他の重要な領域で著しい苦痛や機能の低下を引き起こしている。
    友人を家に呼べない、仕事に集中できない、家族関係が悪化するなど、生活全般に悪影響が及んでいます。
  • E. その「ためこみ」は、他の医学的疾患(脳損傷など)によるものではない。

なぜ「ためこみ症」になってしまうのか?考えられる原因

ためこみ症の原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

  • 遺伝的要因: 家族にためこみ症の人がいる場合、発症リスクが高まることが報告されています。
  • 脳機能の問題: 意思決定、問題解決、注意といった機能を司る脳の領域に、何らかの特性がある可能性が指摘されています。
  • トラウマやストレスフルな出来事: 大切な人を失ったり、経済的な困難に陥ったりした経験が、物を手放すことへの過度な不安に繋がることがあります。

家族ができること、してはいけないこと

ご家族の対応は、ご本人の回復に非常に大きな影響を与えます。愛情を持って、しかし冷静に対応することが重要です。

家族ができる3つのサポート

  1. 病気への理解を示す: 「だらしない」「意志が弱い」と人格を責めるのではなく、治療が必要な「病気」であると理解し、その苦しみに寄り添う姿勢を見せましょう。
  2. 本人のペースを尊重する: 回復には時間がかかります。焦らず、本人が自分で「片付けたい」と思えるようになるまで、根気強く見守りましょう。
  3. 専門家への相談を一緒に検討する: 「一緒に話を聞きに行ってみない?」と提案し、精神科や地域の相談窓口への受診をサポートしましょう。

家族が絶対にやってはいけないこと

  • 本人の許可なく、無理やり物を捨てる: これは最もやってはいけない対応です。本人にとっては自分の身体の一部を奪われるようなもので、深い心の傷となり、症状を悪化させるだけです。
  • 本人を責めたり、人格を否定したりする: 羞恥心や罪悪感は、本人をさらに孤立させ、問題を悪化させます。
  • 問題を放置する: 火災や衛生問題など、命に関わる危険性もあります。「いつか治るだろう」と問題を放置せず、適切な専門機関に相談することが家族の安全を守るためにも不可欠です。

まとめ:一人で悩まず、まずは相談から

「収集癖」と「ためこみ症」には明確な境界線があります。もしご自身やご家族の状況が「ためこみ症」のサインに当てはまるかもしれないと感じたら、一人で、あるいは家族だけで抱え込まず、専門家に相談することが解決への第一歩です。適切な理解とサポートがあれば、必ず状況は改善します。まずは地域の精神保健福祉センターや、専門の医療機関に連絡を取ってみてください。

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