ジャズとして聴くとちょっと物足りないけれど、モブレーとモーガンの組み合わせとして聴くと幸せ。(男って馬鹿だね)
Hank Mobley – Dippin’(Blue Note BST 84209, 1970年代Liberty/UAステレオリイシュー盤)
盤仕様・特徴
- リリース年:1970年(オリジナル録音は1965年6月18日)
- レーベル:Blue Note – BST 84209(Liberty/UA, Inc.配給)
- フォーマット:LP, Album, Reissue, Stereo(1970年代初期リバティ/UAプレス・ブルー/ブラックラベル仕様)
- ラベル仕様:Liberty/UA期の青黒ラベル。外周に「Blue Note Records – A Division of United Artists Records, Inc.」表記。
- カッティング仕様:ラッカー盤カットはRudy Van Gelder(runout部刻印:VAN GELDER)。両面「BNST 84209 A/B VAN GELDER」等の刻印あり。
- プレス地:Liberty/UA Press、USA
パーソネル
- Hank Mobley – テナーサックス
- Lee Morgan – トランペット
- Harold Mabern Jr. – ピアノ
- Larry Ridley – ベース
- Billy Higgins – ドラムス
トラックリスト
- The Dip(Mobley)
- Recado Bossa Nova(Djalma Ferreira)
- The Break Through(Mobley)
- The Vamp(Mobley)
- I See Your Face Before Me(Schwartz-Dietz)
- Ballin’(Mobley)
発表曲の著作権団体は、A1, A3, B1, B3がBlue Horizon Music (BMI)、A2(Recado Bossa Nova)がParis Music (ASCAP)、B2(I See Your Face Before Me)がCrawford Music Corp. (ASCAP)。
この盤特有のポイント・コレクター情報
- Liberty/UA期のリイシュー盤は、オリジナルBlue Noteと比較して手頃かつ入手しやすい。青黒ラベル+VAN GELDER刻印なら高音質再発。
- ラッカー・カッティングはVan Gelder本人(VAN GELDER刻印)。高音質指標のひとつ。
- オリジナル録音場所はEnglewood CliffsのVan Gelder Studio。
- A1, A3, B1, B3以外は、国外出版楽曲。A2はブラジルBossa Novaの代表作。
- Lee Morganのトランペット、Mobleyの柔らかなテナー、Billy Higginsのドラムなど、Blue Note黄金コンボによる1960年代中盤の秀作。
まとめ
『Dippin’』(Blue Note BST 84209, Liberty/UAリイシュー盤)は、Hank Mobleyの名盤の1970年代アメリカ再発。オリジナル1965年録音、VAN GELDER刻印入り高音質盤、Blue Note黄金期メンバーによる上質なハードバップ〜ソウル・ジャズセッション。リバティ/UA期プレスは価格も手頃で、現代のリスナーにとって入門にも最適な一枚です。
私の持っている盤、Hank Mobley Dippin’ BST84209 青黒Liberty
冒頭に書いたようにこのアルバム。個人的には少し評価が難しいアルバムです。
モダンジャズとして聴くと、物足りないです。
それもそのはず。
この時代のモブレーは、「ジャズ・ロック」に傾倒していたので、純粋なハードバップを楽しむことはできません。
そのため、私みたいに、「いや、ジャズ・ロックと走っているけれどモブレーとモーガンの共演なんだから、ジャズとしてのなにかが起こるはず。」と思って聴くと肩透かしを喰らいます。
しかしこのアルバム、徐々に価値が上がっていますね・・・
私がジャズレコードを集め始めた7年くらい前は、まだ、それほどこのアルバム高くはありませんでした。
オリジナルでも1万円2万円(ステレオの話し)で購入できました。
今では、ステレオオリジナルでも5万円くらいするでしょうか。
一気に値上がりしました。
確か、私がジャズを集めて2年くらい経って、つまり今からで言うと5年くらい前に、「モブレーのvangelder」の中では比較的手に入れやすいこのアルバムをステレオオリジナルで購入しました。
「あれだけ人気のハンク・モブレー。ぜひ聴いてみたい!だけど、人気盤は値段が高くて手に入らない。だから、いつかdippinを買ってみせる!」
と意気込んで、なんかのセールか、オンラインかでステレオオリジナルを以前、入手しました。
どうやって手に入れたのかを覚えていないのと同様に、どうやって売却したかもあまり覚えていません。
なんで売ってしまったのか?
正直、あいまいですが、昨日聞いた限りではたぶん、「状態が悪かったからかな」と思います。
もしくは「ジャズっぽくなかったから?」
確かに、「モダンジャズ」や「ハードバップ」を求めている人には合いません。
実際このような意見もあります。
この曲からモブレー入門してしまうと、初期盤は簡単には理解できないかもしれない。
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実際私も、モブレーの入口と言えるアルバムはこのアルバムで、そこから「モブレーって本当に良いのか?」と考えるようになりました。
しかし、今考えるとなんでステレオオリジナル、売ってしまったんだろう、と感じます。
たぶん、うっすら記憶している限りでは、
「モブレーの中でも大して高値ではないから、またほしければ買い直せばいいか。」
と考えていたのを覚えています。
しかしひとつ大きな問題が。
その当時、つまりモブレーのdippin’ステレオオリジナルを売ってしまった当初、私は、「リー・モーガン」のことをほとんど知りませんでした。
つまりこのアルバムも「モブレーのアルバム」としてしか認識をしていませんでした。
しばらく経って、「リーモーガーンの凄さ」を知ってから、あらためてこのアルバムの面々を知って驚愕。
「ウソ・・・このアルバム、ハンク・モブレーとリー・モーガンの共演盤なの?」
おそらく、有名なリカードボサノバのせいで、その認知が薄れてしまっているのではないか?と感じてしまうほど。
状態が悪かったならともかく、もしそのときモブレーとリー・モーガンの共演盤であることを知っていて、なおかつ、リー・モーガンの凄さを知っていたら絶対に手放していませんでした。
そこから、ちょいちょい、ディスクユニオンでこのアルバム、dippin’が出品されるのを見るたびに、どんどん値上がりをしていて、どんどん後悔の念が強まっていきました。
でも、今更オリジナルを買うわけには行かないので、「セカンドやリバティバージョンが出たら買おう」と程度に思っていました。
そんな折にたまたまディスクユニオン町田店で、出品されることが判明。
HANK MOBLEY / DIPPIN’
【規格番号】BST84209
【外装】B VG++
【盤質】B EX-
【特記事項】LIBERTYラベル/青黒/VAN GELDER/裏細字規格ジャケット/取り出し口テープ止め/シュリンク付 価格入りリスト公開!! 8/9(土)JAZZ USED VINYL SALE!! : ディスクユニオン町田店8/9(土)JAZZ USED VINYL SALE!! 今回はモダン系オリジナル盤を中心にご用意!人気の国内盤帯付にUSリイシュー盤、レアグルーヴなジャズファンク・スピリチュアル等...400点超の盛りだくさんでご案内!!8/8(金)更に...
うーん、これはなんとしてもほしい。
値段はきっと相場の7000円前後だろう。
と想定して、朝からディスクユニオンのセールの列に並びました。
どうしても欲しかったので、並ぶ前から何度も、スマホでdiscogsのdippinのアルバムジャケットの画像を目に焼き付けておきました。
あまり大きな声で言いたくありませんが、ディスクユニオン町田店はセール開始前に、待っている人たちとセールアイテム出品列を歩いて周り、どこからどこまでがセール列か確認することができます。
もちろんセールアイテムに手を触れることは許されませんが(触れる人いる)、上からなんとなくレコードのジャケットの「色合い」を見ることができます。
このモブレーのdippinは特徴的なオレンジ色のジャケットなので、ぐるっとセール会場を一周しているときに、上から「オレンジ色のジャケット」に目をつけて物色。
「あれ?ここかな・・・」
と思い、セール開始とともにその列に飛びつき、見事に手に取りました。
「やった・・・」
と思いつつ、他のセールアイテムを見ながら、ちらっと価格を見て愕然。
「うわ・・・足元を見た価格だ。」
価格は9850円とかだったと記憶しています。
高い・・・
discogsの相場が、
この様になっているので、相場は7000円前後だと思ったのですが、まさかの9000円超え。
うーん・・・
しばらく迷ったのですが、もう買うことにしました。
確かに相場より高いのは確かですが、ここで買わないとまた見るたびに欲しくなってしまう。
また頭を悩ませてしまう。
それを考えると、「相場より2000円高い金額」は取り戻せない金額ではない。
状態さえ悪くなければいいや。と思い買うことにしました。
ついでにこのとき同時に、
■JACKIE MCLEAN / MAKIN’ THE CHANGES
【規格番号】NJLP8231
【外装】C VG
【盤質】B VG++
【特記事項】US盤/右紺/RVG/JKT不良
も手に取っていたのですが、こちらは、手に取った瞬間、破格だったので購入することにしました。
私が手に取る前に最低でも2~3人、このアルバム、手にしたはずなのに、なんで買わなかったの?と思うくらいの破格。
それか右紺ならこんなもの?
それはたぶん、近日ご紹介します。
で、アルバムのレビューに戻って
話があっちこっち行ってしまいましたが、アルバムのレビューに戻ると。
何度も言うように、「モダンジャズ」や「ハードバップ」として聴くと肩透かしを喰らいます。
しかし、リー・モーガンとハンク・モブレーの共演盤として聴くと最高です。
ハンク・モブレーが柔らかなテナーを奏でると、リー・モーガンの突き抜けるトランペットを披露する。
さらに二人の音が重なると優雅なアンサンブルが完成する。
さらにそれにくわえて、vangelderの音。
抜群のステレオ感と音圧に圧倒されます。
基本、モブレーは左チャンネル、リー・モーガンは右チャンネルですが、違和感なく。
存分に演奏を楽しむことができます。
ジャズ喫茶で話題に日がついたとされる Recado Bossa Novaももちろん、いいですが、5曲目の、「I See Your Face Before Me」。
これが本当に聞き惚れます。
ハンク・モブレーの「一世一代」とでも言えるような、慕情を込めて吹くようなテナーサックス。
入れ替わってはじまるリー・モーガンの優しいミュートトランペット。
まるで心を洗われる・・・奪われるかのような演奏。
そのあとにくる、Harold Mabern Jr.*のピアノもまた哀愁があっていい。
ここまで「ジャズ・ロック」、「ジャズを求めて聴いている人には合わない」と書きましたが、「I See Your Face Before Me」は最高のモダンジャズバラッドです。
そして、再び、モブレーの哀愁と慕情を込めたテナーサックスがやってくる。
一日と一年の終わりを同時に味わうような、どこか物悲しいサックス。
だけど、そこにモブレーの魅力が存分に伝わってくる。
正直言うと、「こういう曲をもっと増やしてくれていれば・・・」
と思わなくないのですが、この曲だけでも十分聞く価値があると言えるのではないでしょうか。
「 Recado Bossa Nova」の影であまり目立ちませんが、名演・名曲です。
そのあとの、 Ballin’もジャズ・ロックと言うよりもモダンジャズに近い・・・気がする。
いずれにしてもモブレーのテナーソロを思う存分堪能できます。
まぁ、全体的に満足度の高いアルバムです。
何よりもリー・モーガンとハンク・モブレーの絶頂期に近い頃の共演。悪かろうはずがないですね。
なにもオリジナルの高価格で買う必要はないと思いますが、今回のようにセカンドやサードのvangelder刻印つきだったらオススメです。
それにしたって、今回購入した盤に関しては、ちょっと足元を見られた感じがするのは引っかかりますが・・・しょうがないですね。
ただ、状態はよく、唯一ほんの少しだけ深いノイズがありましたが、単発なので許容範囲。やはり状態は大事ですね。
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