遺品整理でレコードが見つかったら？相続税と家族トラブルを防ぐための法的知識ガイド

実家の片付け中に、故人が大切にしていた大量のレコードコレクションが見つかることは珍しくありません。「ただの古いレコード」と思っていても、中には驚くほどの価値を持つ「財産」が含まれている可能性があります。

しかし、価値があるからこそ、遺産分割や相続税の対象となり、思わぬ家族トラブルの火種になることも…。この記事では、遺品整理士と税理士の監修のもと、レコードを相続する際の法的な注意点や、トラブルを避けるための正しい手順を分かりやすく解説します。

レコードは「相続財産」になる？知っておくべき基本ルール

👉 このパートをまとめると！
レコードも立派な「動産」であり、相続財産に含まれます。勝手に処分すると「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなるリスクがあります。

まず大前提として、レコードは法律上「動産」として扱われ、預貯金や不動産と同様に相続財産の一部となります。

勝手な処分はNG！「単純承認」のリスク

「どうせゴミだろう」と判断して、遺産分割協議が終わる前に勝手にレコードを売却したり捨てたりしてしまうと、法律上「相続することを認めた（単純承認）」とみなされる可能性があります。

もし故人に多額の借金があった場合、後から「相続放棄」をしたくても、レコードを処分してしまったがために認められず、借金を背負うことになる…という最悪のケースも考えられます。遺産分割が完了するまでは、レコードは「相続人全員の共有財産」として慎重に扱う必要があります。

高額レコードと相続税：申告が必要なケースとは？

👉 このパートをまとめると！
レコードの評価額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告が必要です。専門業者による査定書が、税務署に対する証明になります。

一般的な中古レコードであれば、家財道具一式としてまとめて評価されることが多いですが、希少価値の高いコレクションの場合は注意が必要です。

「評価額」はどう決まる？

相続税の計算におけるレコードの評価額は、原則として「売買実例価額（市場価格）」や「精通者意見価格（専門家の鑑定額）」に基づきます。つまり、「買取業者の査定額」がそのまま評価額の目安となります。

もしコレクション全体の価値が数百万円〜数千万円になる場合、それが相続税の基礎控除額（3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数）を超える要因になれば、申告と納税の義務が発生します。

形見分けと遺産分割：家族トラブルを防ぐ3つのポイント

👉 このパートをまとめると！
「誰が引き継ぐか」「売却して現金を分けるか」を全員で話し合い、合意内容を書面に残すことがトラブル回避の鉄則です。

レコードは「分けにくい財産」の代表格です。特定の相続人が独り占めしたり、勝手に売却したりすると、親族間の争いに発展しかねません。

1. 「換価分割」を検討する

レコードそのものを分けるのが難しい場合、全て売却して現金化し、そのお金を相続分に応じて分ける「換価分割」が最も公平でトラブルが少ない方法です。

2. 「形見分け」の範囲を明確にする

経済的価値の低いレコードを、思い出の品として特定の人が引き取る「形見分け」は、常識の範囲内であれば贈与税の対象にはなりません。ただし、高額盤が含まれていないか、事前に査定を受けて確認しておくのが無難です。

3. 遺産分割協議書に記載する

後々の言った言わないを防ぐため、「レコードコレクション一式は長男〇〇が相続する」「売却代金は〇〇と△△で折半する」といった合意内容を、遺産分割協議書に明記しておきましょう。

まとめ：正しい知識で、故人の想いと資産を守ろう

遺品整理におけるレコードは、単なるモノではなく、法的な手続きが必要な「資産」です。勝手な判断で処分せず、まずは専門業者の査定を受けて正しい価値を把握することが、相続税対策の第一歩であり、家族の絆を守ることにも繋がります。

故人が愛した音楽を、法的な不安なく、清々しい気持ちで次世代へ引き継ぐために。この記事の知識をぜひ役立ててください。

参考文献リスト

• 国税庁（相続税がかかる財産）
• 国民生活センター（訪問購入トラブル）