私は自他ともに認めるかなりの駄耳(だじ)。
昔、学生時代にちょっとだけ音楽をかじっていたにも関わらず、音楽理論的なことはさっぱりわからない。
だけどそれでも、自信を持って言えることがある。
このバージョンで十分。十分すぎるほど十分。
そして美しい。
Miles Davis Sextet – Someday My Prince Will Come(Columbia CS 8456, 1971年USリイシュー盤)
盤仕様・特徴
- リリース年:1971年(オリジナルは1961年発表。こちらは1970年代初頭のUSリイシュー盤)
- レーベル:Columbia – CS 8456(赤地に黒文字、周囲に”Columbia”表記と”walking eye”ロゴ。リイシュー期特有デザイン)
- フォーマット:LP, Album, Reissue(US盤。ステレオ仕様/当時のColumbiaリイシュー盤)
- ジャケット:美しい写真を活かしたカバーデザイン(写真:Vernon Smith/カバー写真:Bob Cato)
- プロデューサー:Teo Macero
- 録音背景:本作はマイルス・デイヴィスが新たなミューズへアプローチし、モード奏法から一部スタンダード曲回帰の流れを示す意欲作として録音。
- 主な仕様:1971年のリイシュー盤は、ジャケット裏やラベル、ランアウト部等にオリジナルとの識別ポイントあり。
パーソネル
- Miles Davis – トランペット
- Hank Mobley – テナーサックス
- John Coltrane – テナーサックス(一部トラック参加)
- Wynton Kelly – ピアノ
- Paul Chambers – ベース
- Jimmy Cobb – ドラムス
トラックリスト
- Someday My Prince Will Come – 9:06
- Old Folks – 5:16
- Pfrancing – 8:32
- Drad-Dog – 4:30
- Teo – 9:35
- I Thought About You – 4:30
参加:John Coltraneは「Someday My Prince Will Come」および「Teo」など部分的に参加。リリース情報としては1971年リイシューだが、録音自体は1961年。
この盤特有のポイント・コレクター情報
- 1971年リイシュー盤はオリジナル(1961年黒×黄ラベル)と異なり、赤地ラベル+”walking eye”ロゴが周囲に並ぶデザインが特徴。ラベルとランアウト刻印の違いに注目。
- 本作はモード時代への移行点を示しつつも、タイトル曲などでスタンダード回帰・叙情性を感じさせる内容。Coltrane在籍最終期のセッション参加作としても重要。
- ジャケット写真・デザイン面も評価が高く、カバーガール(フランシス・テイラー)はマイルスの当時の妻。
まとめ
『Someday My Prince Will Come』(Columbia CS 8456, 1971年USリイシュー盤)は、モード奏法とスタンダード両方の魅力が共存するマイルス・デイヴィス・セクステットの代表的アルバム。Coltraneの局所的参加、リイシューラベル仕様もコレクター間で識別ポイントとなる注目盤。
情報元Discogs URL:
Miles Davis Sextet Someday My Prince Will Come CS8456 USリイシュー盤 赤ラベル
このアルバムは、当然。20年ほど前、ジャズをCDで聴き始めた当初から持っていたもので、何回か聴いた記憶があります。
そこから約15年後。
今度はジャズを「レコード」で集めるようになってからもやはり、かなり初期の段階から、「手に入れよう」と思っていたレコードのイチ枚です。
で、記憶の限りでは、結構そうそうに、ステレオのオリジナルを入手することができました。
しかし、かなりレコード集めの初期段階(まだ数十枚しか持っていなかった頃だと思う)だったこともあり、「傷物」に関する認識が甘く、たまたま見つけたほとんど名も知られていないオンラインのレコードストアで購入し、実際に届いたものを聞いて、良し悪しもわからず、「やっぱり名盤だ」と満足していました。
そこからさらにレコードを数枚集めるようになり、さらに、人と話したりネットで読んだりしてジャズレコード収集の知識がついてくると同時に、そのときに名も知れぬオンラインレコードストアで購入した、「someday my prince will come」が「聞くに耐えない状態」であることが発覚。
かなり深い傷があり、針飛びがあったか、かなり大きな周回ノイズが何回もあったかで、当時は、
「よくこんなものを買ったものだ。」と嘆いたことを覚えています。
そうして、確か初めていったばかりの名古屋のラジオデイズレコードさんに買い取ってもらって、手放したことを記憶しています。
が、そこから5年近く経って、ちょくちょくラジオデイズレコードさんを訪れますが、そのたびに、「あ、これまだ残っているのね・・・」と目にする機会があり、なんだか悪いような気持ちになっているのを覚えています。
半年くらい、訪店していないけど、あのレコード、まだ残っているのかな・・・
そんな記憶もあり、someday my prince will come,まぁ、ほしいにはほしいんだけど、そんな苦い記憶も相まって、「まぁ、別に急いで手に入れる必要もないか」とどんどんどんどん後回しになっていました。
ではなぜ、今回入手するに至ったのか?
たまたま送料を無料にするために入手した経緯
先日紹介した、こちらの盤、
結局、オンラインで入手することになったものの、
本来は「店舗受取」で注文した商品でした。
だけど、手違いで(こっちの手違いか、送付した店の手違いかは不明だけど)別の盤が届いてしまい、結局それはキャンセルする羽目になりました。
で、結局2枚のレコードだけ買ったものの、なんだか心残りというか、儚い気持ちになっていたので、帰路につく前に、念の為、店に並んだレコードをチェック。
マイルスのエサ箱を見たときに、偶然、someday my prince will comeのセカンドバージョンが出品されているのを手にしました。
価格は6,000円台。つまり2eyeでした。
「うーん、2eyeで6,000円台、でsomeday my prince will come。結局キャンセルしたレコードもあったわけだし、何よりもセカンドコレクターの血が騒ぐ。」
と思い、かなり購入の意欲が沸き立ち、試しに試聴してみたら、最後の終わりの方で、ヤケ?によるノイズが発生して、「あ、これはダメだ」と思いキャンセル。
【針飛びはどこの箇所だろうと気になる】john coltrane ballads A32 MONO vangelder オレンジ艶ABC
この記事でも書きましたが、終わり間際だろうと、それが針飛びだろうと焼けによる周回ノイズだろうと、やっぱり箇所がどこだろうと気に放ってしまうものなんですよね。
で、キャンセルして、帰路についている間に、ふと思いました。
「うーん、考えてみれば、この辺のコロンビアのレコードは2eyeだろうとlate赤ラベルだろうと、大して音質は変わらないんじゃないか?」
実際、cotton clubさんも、
セカンド以降のプレスでも恐らく同じくらい素晴しいと推測します。Columbiaですから品質か劣化するとは思えません。
『マイルスの魅力』オリジナル盤の価格動向については無関心になれない。最近の動向ではマイルスのColumbia盤が5ケタで取引されているのを興味深く眺めている。Columbiaの…
このように語られています。
で、ちょうどその前に店舗受取でキャンセルした、art blakey jazzcorner ofを再注文するにあたって、もう店舗受取はしなくてもいい。
自宅に届けてもらおう。
だけど、自宅に届けて貰う場合、ディスクユニオンでは、5000円以上の注文で送料無料。
購入予定のjazzcorner ofは、3650円で、微妙にもったいない。(もっと安ければ別に送料かかってもそのまま買ってしまうんですけど)
ということで、「送料を無料にするため」に「ついで」に購入したのがこのsomeday my prince will comeのlate赤ラベルでした。
まさか、jazzcorner ofよりも評価が圧倒的に上になるとは想像もしていませんでしたが。
実際に聞いてみて
冒頭でも書きましたが、大満足です。
入手したのは、late赤ラベル。
ご存知のようにコロンビアレーベルは細かく言うと、
- 6eye
- 6eye CBSありレーベル
- 6eye DGなし
- 6eye 2eye(これも白矢と黒矢で分かれる。自分にとってはこれは本当にもうどちらでもいい)
などのオリジナルからの変遷があります。
そのため、実質、私が購入したのは、late赤ラベル。
何なら5th以降のバージョンと言えるでしょう。
しかしcotton clubさんも仰っていたように、音質は非常に素晴らしい。
確かマト盤は片面1jとか。だけど、赤ラベルだとあまり関係ないですかね。
でもとにかく音質は素晴らしいです。
これをオリジナルで買おうとすると、間違いなく、1~2万円は最低でもするでしょう。
ディスクユニオン町田店で、2ndバージョンの2eyeでも6,000円台でした。
私が購入したこのlate赤ラベルは1900円。
その代わり、状態は、盤面、ジャケットともにEX。完璧。
たまにチッチッとノイズはありますけどどれも単発(さすがにこれはしゃあない。)
だけど、音質は本当に凄まじい。
今、手元にオリジナル盤がないので比較のしようはありませんが、絶対にオリジナルに比べて遜色しない音質だと思います。
少なくとも、オリジナル盤が仮に2万円だとして、それを買うくらいなら、
1900円でこの5th以降の盤を買って、残ったお金で別のレコードを買うほうが絶対に推奨できます。
そのくらい音質は凄まじい。
マイルスのトランペットもウィントン・ケリーのピアノも、モブレーのサックスもコルトレーンのあのちょっとクセのあるトランペットも美しく部屋の中で鳴り響きます。
演奏はもちろん、moreさんもおっしゃるように、
僕のもう一枚の愛聴盤である「SOMEDAY~」を聞きながらいつも思う。このステレオ録音は個人的には高く評価していて、前述の「JAZZ TRACK」と共に常に音質に「美」を感じる事が出来る。マイルスと向き合うコルトレーンのアドリブの麻薬的な美しさが、この録音の美しさをいっそう際立たせている。
ちょっとめずらしい?じゃず・レコード盤??? Vol.15
やはりこのステレオ録音は本当に美しい。
あくまでも個人的な意見ですが、多くのジャズレコードコレクターが言う、
「kind of blueのステレオ録音は素晴らしい」
にはあまり賛同ができません。(何か機械的な音のような感じがする)
だけど、このsomeday my prince will comeに関してはステレオ録音が本当に美しい。
ピアノの音も、管楽器の音も、ドラムもベースもすべてが心身一体。
美しい音を奏でてくれます。
各曲に関しては、私が今更語るべくもないことですが、「someday my prince will come」をはじめとして、old folks、i thought about youなど、往年のスタンダードナンバーをマイルスが芸術的に昇華させて演奏してくれます。これまた美の極致の最高点と言えると思います。
俗に言う、モブレーの「芋テナー」と言われる所以はここから始まったみたいですが、
モブレーはコルトレーンと比較され芋テナー呼ばわりされる原因となった
Miles Davis マイルス・デイビス CDレビュー リーダー作 ④世紀のジャズ名盤「カインド・オブ・ブルー」から始まる時期です。エバンス、キャノンボールが退団し、コルトレーンもヨーロッパ・ツアー後に退団します。モブレー、ケリーらのメンバーと「サムディ・マイ・プリンス」をスタジオ録音した後、「ブラックホーク...
でもあくまでもそれは、違いであって、良し悪しではない。
こんな駄耳でもハッキリと聞き分けできるくらい、同じ楽器のテナーサックスであるモブレーとコルトレーンの違いがわかる。
だけどだからといって、モブレーがダメなわけじゃなくて、それはそれで良い。
十分モブレーもモブレーらしい演奏をしていると思う。
ただ確かに、マイルスやコルトレーンに遠慮(怖気づいている?)しているのか、やや控えめ。
でもいいじゃないですか。やっぱりモブレーはモブレーです。
とにかく。
やっぱり良いアルバムです。
十分。
5thだろうとなんだろうと、音も演奏も最高です。
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