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初心者でも分かる「オリジナル盤レコード」の見分け方【ブルーノート編】

レコードの知識

初心者でも分かる「オリジナル盤レコード」の見分け方【ブルーノート編】

ジャズレコードの世界に足を踏み入れると、必ず耳にする「オリジナル盤」という言葉。特にブルーノート・レーベルのオリジナル盤は、世界中のコレクターが追い求める特別な存在です。しかし、「オリジナル盤って、再発盤と何が違うの?」「どうやって見分ければいいの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ジャズの名門ブルーノート・レーベルに焦点を当て、初心者の方でもオリジナル盤の価値とその見分け方の基本を理解できるよう、プロの視点から分かりやすく解説します。この知識があれば、あなたのレコードコレクションを見る目が変わり、その真の価値に気づくことができるでしょう。

この記事を書いた人
  • ケン

    私自身の苦い後悔を原点に、「レコードの価値を未来へ繋ぐ」という信念で、一枚一枚の記事を執筆しています。収集の喜びも、売却の知識も。セカンドコレクターとして全力で文章を綴ります。 → プロフィール


この記事の監修者
  • 佐藤彰男

    音楽産業アナリスト / ヴィンテージオーディオ評論家 音楽専門誌やオーディオ誌で20年以上にわたり連載を持つ。著書に『レコード盤はなぜ鳴るのか:カッティングからプレスまでの音響技術史』。オークションハウスの希少盤評価アドバイザーを歴任。 読者を「知識を求める探求者」と捉え、単なる結論ではなく、その背景にある原理や文脈を丁寧に解説する教育者としての立場を取る。いたずらに売却を煽るのではなく、文化的な価値を理解した上で、読者自身が最良の判断を下せるよう、客観的で多角的な情報を提供することを信条とする。

そもそも「オリジナル盤レコード」とは?なぜ価値が高いのか?

そもそも「オリジナル盤レコード」とは?なぜ価値が高いのか?

👉 このパートをまとめると!
オリジナル盤とは、あるアルバムが最初に製造されたレコードのこと。音質の優位性と圧倒的な希少性から、再発盤とは比較にならないほどの高い価値を持ちます。

オリジナル盤(Original Pressing)とは、その名の通り、あるアルバムが歴史上初めて製造・プレスされたレコードのことを指します。後年になって同じ音源から作られた「再発盤(Reissue)」とは、明確に区別されます。

では、なぜオリジナル盤はこれほどまでに価値が高いのでしょうか?理由は大きく分けて2つあります。

1. 音質の優位性
レコードは、録音されたマスターテープから「スタンパー」と呼ばれる金型を作り、それを塩化ビニールの盤にプレスして製造されます。オリジナル盤は、マスターテープに最も近い、鮮度の高いスタンパーから作られています。そのため、再発盤に比べて音の解像度や鮮度、迫力が優れているというのが、コレクターやオーディオファンの間での共通認識です。

2. 圧倒的な希少性
発売から数十年が経過した現在、完璧な状態で現存するオリジナル盤の数は極めて限られています。特にブルーノートのような歴史的レーベルの初期盤は、もともとのプレス枚数も少なく、その多くが再生や経年により劣化・消失しています。この「手に入れたくても手に入らない」という希少性が、オリジナル盤の市場価値を押し上げる最大の要因となっているのです。

【ブルーノート編】オリジナル盤を見分ける3つの最重要チェックポイント

【ブルーノート編】オリジナル盤を見分ける3つの最重要チェックポイント

👉 このパートをまとめると!
ブルーノートのオリジナル盤は「住所表記」「Deep Groove」「耳マーク」の3点で見分けます。これらは製造時期を特定する決定的な手がかりです。

ブルーノートのオリジナル盤鑑定は、非常に奥が深い世界です。しかし、初心者の方でも基本となる3つのポイントを押さえるだけで、そのレコードがどの時代に作られたものなのかを大まかに推測することができます。

チェックポイント1:センターレーベルの「住所表記」

レコード中央の紙ラベル(センターレーベル)に記載されているブルーノート社の住所は、製造時期を特定する最も重要な手がかりです。ブルーノートは歴史の中で何度も移転しており、その住所表記の変遷がプレス時期を示しています。

住所表記 主なプレス時期 通称・特徴
LEXINGTON AVE NYC 1950年代初期〜中期 レキシントン。最も価値が高いとされる初期盤。
47 WEST 63rd NYC 1950年代中期〜後期 63rd。黄金期のオリジナル盤に多く見られる。
NEW YORK USA 1960年代初期〜中期 NYラベル。RVG刻印とセットで価値が高い。
A Division of LIBERTY RECORDS, INC. 1966年以降 リバティ。一般的にオリジナル盤とは見なされない。

もしお手持ちのレコードの住所が「LEXINGTON AVE」や「47 WEST 63rd」であれば、それは非常に価値の高いオリジナル盤である可能性が高いと言えます。

チェックポイント2:盤の溝「Deep Groove(ディープ・グルーヴ)」

Deep Grooveとは、センターレーベルの外周付近にある、太く深い溝のことを指します。これは初期のプレス機の特徴であり、おおよそ1960年代中期までのブルーノート・レコードに見られます。

レーベル面に光を当てて斜めから見ると、この溝の有無は比較的簡単に見分けることができます。一般的に、Deep Grooveがある盤はない盤に比べて価値が高いとされています。

チェックポイント3:盤の溝にある「耳マーク」と「RVG刻印」

レコードのラベルと音溝の間の、何も録音されていない部分(デッドワックス、ランオフエリアなどと呼びます)には、製造に関する様々な情報が刻印されています。ブルーノートのオリジナル盤鑑定で特に重要なのが、以下の2つです。

  • 耳マーク(Plastylite “P” mark): 手書きの “P” のように見えるこのマークは、ブルーノートの初期盤をプレスしていたPlastylite社の証です。耳に似ていることから、コレクターの間で「耳マーク」と呼ばれています。
  • RVG刻印: ブルーノート・サウンドの生みの親である伝説的エンジニア、ルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)がカッティングした証です。機械で刻印された「RVG」の文字が見られます。

この「耳マーク」と「RVG刻印」が両方存在すれば、それはヴァン・ゲルダー自身がマスタリングし、Plastylite社がプレスした、紛れもないオリジナル盤であることを示しています。

オリジナル盤の価値を知ることが、なぜ重要なのか?

オリジナル盤の価値を知ることが、なぜ重要なのか?

👉 このパートをまとめると!
オリジナル盤の知識は、コレクションの真の価値を理解し、売却時に安く買い叩かれるリスクを防ぐための自己防衛の武器となります。

ここまでオリジナル盤の見分け方を解説してきましたが、この知識は単なる雑学ではありません。あなたの資産を守るための重要な「武器」となります。

もしあなたがオリジナル盤の価値を知らずに、専門知識のないリサイクルショップなどに買取を依頼してしまったらどうなるでしょうか。貴重なオリジナル盤が、安価な再発盤と同じ「一枚数百円」という価格で査定されてしまう危険性があります。実際、そのような悲劇は後を絶ちません。

今回ご紹介した3つのチェックポイントは、あくまで基本の入口です。しかし、この基本を知っているだけでも、「これはもしかしたら価値があるかもしれない」と気づくことができます。その気づきが、あなたの貴重なコレクションが不当に安く評価されるのを防ぐ、最初の、そして最も重要な一歩となるのです。

もしセルフチェックで「オリジナル盤かもしれない」と感じるレコードが見つかったら、ぜひ一度、信頼できるレコード買取の専門家に見てもらうことをお勧めします。そこから、あなたのコレクションの新たな物語が始まるかもしれません。

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